労働基準法1条から7条までは労働基準法の基本7原則と呼ばれ、労基法の基礎と位置付けられており、労働基準法を理解する上で大切な考え方になります。
今回は労基法4条、男女同一賃金の原則について内容の具体的な解説と、関連する通達や裁判例を用いて会社での男女間の賃金設定が違法になるケースを紹介しています。
もくじ(ワンクリックで一発ジャンプ)
労働基準法4条、男女同一賃金の原則条文
労働基準法4条
使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的な取り扱いをしてはならない。
条文の引用HP:電子政府の総合窓口 e-Gov 労働基準法
男女同一賃金の原則の解説
これは文字通り労働者が女性であることを理由として、男性と女性で賃金に区別をつけることを禁止しているということです。
そしてこの条文でいう差別的取り扱いとは、女性のみ賃金を高くするぞ!というような女性のみ有利に取り扱うものも差別的取扱いになるとされています。
でも実際この規定は賃金だけなので労働条件における男女差は無くなりません、そこで賃金以外の労働条件における男女差別も無くそう!
ということで募集・採用・昇進・昇給・解雇・教育訓練・定年・退職・妊産婦の保護など守備範囲が多岐にわたる、男女雇用機会均等法という法律が1985年に制定されました。
男女別の賃金が違法になる具体的ケース
それではここからは会社での労務管理や、働いている人が自分の労働条件の適法・違法かを判断できるように通達や裁判例を用いて具体的にこの条文に違反するケースをまとめてみました。
基本的な考え方
まず大前提として、この差別的取り扱いは女性であることのみを理由とした賃金の差別を禁止しているので、女性と男性の職務・能率・勤続年数・年齢の違いによって賃金に差をつけることは違法ではありません。
参考(昭22・9・13 発基17号)
男女の賃金差が違法になるケース
- 男女間で昇格基準が異なっている
条文の考え方に即して言えば当たり前なんですが、男女間でたとえば昇格の基準に必要な在級・在職年数を用いている場合に異なる基準を使っている
このことによって実際に男女間に給料格差がある場合は違法になります。
(平24・12・20基発1220第4号 雇児発1220第2号)
- 男女間で個人的な差異が無いのに給料の支給要件が違う
これは始めに書いた基本的な考え方の反対で、女性と男性の職務・能率・勤続年数・年齢の違いがあれば賃金の差は認められますが
それが同一の場合でたとえば、男性は全て月給、女性はすべて日給として男性は月々の労働日数に関係なく一定の給料を支給しているのに
女性に対しては、月の労働日数を基準として給料を支給している時は違法になります。
(昭63・3・14 基発150号)
裁判例では
①男性と女性で異なった支給基準を設けている時は、特段の事情が認められない場合は女性であることを理由とした差別取り扱いになり
そしてこのような場合は、労働契約の賃金の部分は同法12条に基づき無効になって、男性労働者に支払われた金額との差額分の請求をすることが出来るとしています。
(秋田相互銀行事件 秋田池判昭50・4・10 労働関係民事裁判例集26巻2号388頁)
②採用時の初任給格差が、その経緯・経験・及び担当職務で見て合理的であるとしても、その後6年経過して当該女性労働者が
勤続年数や年齢の近い男性労働者と比べて、職務の内容・責任・技能で劣らない場合はこの女性労働者の基本給を男性並みに上げることが必要で、これを怠るとこの条文の違反になる。
(日ソ図書事件 東京地判平4・8・27 労働判例611号10頁)
- 男女間で家族手当や住宅手当などのの支給要件が違う
家族手当や住宅手当などについて、一方の性労働者にはその配偶者の所得が一定額を超えてもその手当を支払うのに
もう一方の性の労働者には、配偶者の所得が一定額以下では無いと手当を支払わないというような取り扱いはこの法律に違反することになります。
(平24・12・20基発1220第4号 雇児発1220第2号)
裁判例では
①扶養親族を有する世帯主に対して家族手当と世帯主手当を支給するケースで、男性の行員には妻に所得税法上の扶養控除対象限度額を超える所得があるかに関係なく手当を支給
しかし女性の行員に対しては、夫に扶養控除対象限度額を超える所得があった場合に手当の支給を認めないのは男女の性別によっての賃金差別であり無効としました。
(岩手銀行事件 仙台高判平4・1・10 労働関係民事裁判例集43巻1号1頁)
全体で参考にしたHP:労働基準法の男女同一賃金原則について教えてください。
それでは以上で終わります。