フレックスタイム制、労基法改正での変更内容とは?

フレックスタイム制の改正

今回の記事では、2018年6月29日に国会で成立した働き方改革関連法案の1事項、労基法32条の3、フレックスタイム制の改正について

フレックスタイム制の内容から改正事項の施行日、改正で何が変わったのか?ということを解説していきます。

社労士オザワ
働き方改革関連法案では時間外労働の上限規制や、高度プロフェッショナル制度にばかり注目が集まっていますが

このフレックスタイム制の改正によって、より柔軟に労働者が働ける環境を作ることが出来るようになるので要チェックです。

 

フレックスタイム制の概要(改正前)

そもそもこのフレックスタイム制ってどんな制度なんでしょうか?

このフレックスタイム制とは任意に作られた労働時間管理の手法ではなく、労働基準法32条2項・労働基準法施行規則、第12条の3で定められた法律上の労働時間制度です。

 

労働基準法32条2項・労働基準法施行規則第13条の3の条文

実際の条文はこんな感じ↓この章ではこの条文を中心に解説していきます。

労働基準法32条の3

使用者は、就業規則その他これに準ずるものにより、その労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定にゆだねることとした労働者については

当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは

その協定で第二号の清算期間として定められた期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において、同条の規定にかかわらず、一週間において同項の労働時間又は一日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。

1 この条の規定による労働時間により労働させることができることとされる労働者の範囲
2 清算期間(その期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において労働させる期間をいい、一箇月以内の期間に限るものとする。次号において同じ。)
3 清算期間における総労働時間
4 その他厚生労働省令で定める事項
労働基準法施行規則・第12条の3
第12条の3、法第32条の3第4号の厚生労働省令で定める事項は、次に掲げるものとする。
1 標準となる一日の労働時間
2 労働者が労働しなければならない時間帯を定める場合には、その時間帯の開始及び終了の時刻
3 労働者がその選択により労働することができる時間帯に制限を設ける場合には、その時間帯の開始及び終了の時刻

条文を見ると何か難しそうな制度ですが、フレックスタイム制は2つの特徴を抑えると簡単に理解できます。

 

特徴①1日8時間1週40時間にとらわれない

労働基準法32条2項によって労働者が働ける1日の法定労働時間は8時間・1週間だと40時間までと定められています。

(この時間を超えて労働させるには36協定と呼ばれる労使の協定を提出しなければならない、またこの時間を超えて労働した場合には通常の賃金+25%の割増賃金が発生する)

しかし、このフレックスタイム制は1か月以内の一定期間(これを清算期間と呼ぶ)の総労働時間が法定労働時間の1週平均40時間以内になるように定める+労働者が始業・終業の時刻を自由に選択できることを条件に1日1週の法定の労働時間は適用されません。

社労士オザワ
この制度は弾力的労働時間制度と呼ばれていて

●変形労働時間制(1ヵ月単位・1年単位・1週間単位)

●フレックスタイム制

この2つがあり、変形労働時間制は日や季節ごとの繁閑の差(忙しい時と暇な時の差)がある業務について、会社側が効率的な労働時間の配分を行えるようにした制度ですが

フレックスタイム制は、働く人の生活と仕事の調和が保てるように、労働者が主体的に運用できる制度になっています。

 

特徴②日ごとの出勤時間と退社時間を自由に選択し働くことが出来る

フレックスタイム制、基本モデル

出典:厚生労働省・東京労働局、フレックスタイム制の適正な導入のために

この図は基本的なフレックスタイム制の一日の流れです。フレキシブルタイムとは出勤や退社が自由に決められる時間、コアタイムとは必ず労働しなければならない時間で

このフレックスタイム制は、先ほども書いたように始業及び終業の時間を労働者が自由に選択できることが要件となっており

決められた1ヵ月以内の一定期間の総労働時間の枠内でフレキシブルタイムの時間を調整することによって、働く人が日ごとの労働時間を自分で決めることが出来る制度になっています

またこのフレキシブルタイムとコアタイムは必ず設けないといけないものではないですが、この2つを設けることが一般的です。

社労士オザワ
この始業と終業の時間は、一方のみを自由に決められる制度はフレックス制度に当たりませんので注意してください。

 

フレックスタイム制の採用要件

そしてこのフレックスタイム制ですが、採用に当たってはいくつかの要件があります。

①就業規則により始業及び終業の時刻を労働者の決定に委ねる旨を定める

就業規則記載例

フレックスタイム制就業規則

出典:厚生労働省、効率的な働き方に向けて、就業規則具体例

②先ほど挙げた就業規則に加えて、以下の事項を定めた労使協定も必要です。(労働基準監督署への届け出の必要なし)

必ず定める事項任意に定める事項
●対象労働者の範囲●コアタイムの時間帯
●清算期間(1ヵ月)●フレキシブルタイムの時間帯
●清算期間中の総労働時間
●標準となる1日の労働時間

記載例

フレックスタイム制、労使協定例

出典:厚生労働省・東京労働局、フレックスタイム制の適正な導入のために

 

フレックスタイム制での時間外労働

次にこのフレックスタイム制ですが、どのようなケースにおいて時間外労働となり割増賃金が発生するのでしょうか?

その答えは簡単で、清算期間(1ヵ月及びその範囲内の期間)において1週間平均40時間を上回る法定労働時間の総枠を超えて労働者が働いた場合にその時間が割増賃金の対象になります。

また法定労働時間の総枠は以下の計算式で出すことができます。

法定労働時間の総枠=週の法定労働時間×変形期間の暦日数/7

そしてその計算式で出したのが下の表

変形期間総枠
4週間160時間
29日165.7時間
30日171.4時間
31日177.1時間

実際は計算式で計算するよりも、月ごとの総枠がこの時間を超えていなければ、1週間平均で40時間となり割増賃金は発生しません。

逆に超えることがある場合には事前に時間外労働の協定(36協定)の提出が必要です。

36協定記載例

フレックスタイム制の36協定記載例

出典:厚生労働省・東京労働局、フレックスタイム制の適正な導入のために

この赤丸の所がフレックスタイム制の場合の36協定に必要な事項です。フレックスタイム制では、1日ではなく1日を超えるフレックスタイム適用の清算期間(この表だと1ヵ月)と1年の延長時間を記載すれば大丈夫です。

 

フレックスタイム制の改正内容(2019年4月施行)

それではここからが本題、先ほどまでは簡単にフレックスタイム制の内容をまとめましたが、働き方改革関連法案の労基法改正にて、このフレックスタイム制はどう変わったのでしょうか?

 

改正フレックスタイム制の法律要綱と条文

この改正内容は、厚生労働省のHP(厚生労働省、働き方改革の実現に向けて)内にある働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案を参考にして作成しました。

そしてこの改正内容の概要は以下の通りです。

1 フレックスタイム制の清算期間の上限を三箇月とするとともに、使用者は、清算期間が一箇月を超える場合においては

当該清算期間をその開始の日以後一箇月ごとに区分した各期間ごとに当該各期間を平均し一週間当たりの労働時間が五十時間を超えない範囲内において労働させることができるものとすること。

2 一箇月を超える清算期間を定めるフレックスタイム制の労使協定(その事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは

労働者の過半数を代表する者との書面による協定をいう。以下同じ。)については、行政官庁への届出を要するものとすること。

3 フレックスタイム制が適用される一週間の所定労働日数が五日の労働者について、労使協定により、労働時間の限度について、清算期間における所定労働日数を八時間に乗じて得た時間とする旨を定めたときは

使用者は、当該清算期間を平均し一週間当たりの労働時間が当該清算期間における日数を七で除して得た数をもってその時間を除して得た時間を超えない範囲内で労働させることができるものとすること。

4 使用者は、清算期間が一箇月を超えるものであるときの労働させた期間が当該清算期間より短い労働者について、当該労働者を労働させた期間を平均し一週間当たり四十時間を超えて労働させたときは

その超えた時間の労働について法定割増賃金に係る規定の例により割増賃金を支払わなければならないものとすること。

改正後の条文、下線部が新設事項

労働基準法32条の3

使用者は、就業規則その他これに準ずるものにより、その労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定に委ねることとした労働者については

当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは

その協定で第二号の清算期間として定められた期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において、同条の規定にかかわらず、一週間において同項の労働時間又は一日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。

1 この項の規定による労働時間により労働させることができることとされる労働者の範囲
2 清算期間(その期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において労働させる期間をいい、三箇月以内の期間に限るものとする。以下この条及び次項おいて同じ。)
3 清算期間における総労働時間
4 その他厚生労働省令で定める事項
② 清算期間が一箇月を超えるものである場合における前項の規定の適用については、同項各号列記以外の部分中「労働時間を超え ない」とあるのは

「労働時間を超えず、かつ、当該清算期間をそ の開始の日以後一箇月ごとに区分した各期間(最後に一箇月未満 の期間を生じたときは、当該期間。以下この項において同じ。) ごとに当該各期間を平均し一週間当たりの労働時間が五十時間を 超えない」と、「同項」とあるのは「同条第一項」とする。

③ 一週間の所定労働日数が五日の労働者について第一項の規定により労働させる場合における同項の規定の適用については、同項 各号列記以外の部分(前項の規定により読み替えて適用する場合 を含む。)中「第三十二条第一項の労働時間」とあるのは

「第三 十二条第一項の労働時間(当該事業場の労働者の過半数で組織す る労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数 で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表 する者との書面による協定により、労働時間の限度について

当 該清算期間における所定労働日数を同条第二項の労働時間に乗じ て得た時間とする旨を定めたときは、当該清算期間における日数 を七で除して得た数をもつてその時間を除して得た時間)」と、 「同項」とあるのは「同条第一項」とする。

④ 前条第二項の規定は、第一項各号に掲げる事項を定めた協定について準用する。ただし、清算期間が一箇月以内のものであると きは、この限りでない。

第三十二条の三の二 使用者が、清算期間が一箇月を超えるものであるときの当該清算期間中の前条第一項の規定により労働させた 期間が当該清算期間より短い労働者について、当該労働させた期 間を平均し一週間当たり四十時間を超えて労働させた場合におい ては

その超えた時間(第三十三条又は第三十六条第一項の規定 により延長し、又は休日に労働させた時間を除く。)の労働につ いては、第三十七条の規定の例により割増賃金を支払わなければ ならない。

それでは次にこの改正内容を解説していきます。

 

清算期間が1ヵ月から3か月に変更になった

この清算期間とは、フレックスタイム制を適用する期間の事で従来は1か月以内の範囲まででしたが、この改正により2019年4月から3カ月までの範囲に変更になりました。

そしてこの1ヵ月以上のフレックスタイム制を採用する場合にはいくつか新しい要件があるので、表にまとめてみました。

元々の要件

(どの清算期間でも必要)

改正後追加事項

(清算期間が1ヵ月を超える場合)

就業規則で始業・終業時間を労働者に委ねる旨を定める
労使協定を締結する労使協定を労基署に提出が必要
清算期間の労働時間は1週平均40時間にする
1か月ごとの区分期間の労働時間は1週平均50時間まで
社労士オザワ
この追加事項の目的は、働く人の加重労働の防止です!

簡単にまとめると、1ヵ月を超えるフレックスタイム制の採用要件は

●就業規則に始業・終業時間を労働者に委ねる旨定める

●労使協定を労基署に提出

●清算期間(フレックスタイム制の適用期間)の全期間を通しての1週の平均労働時間は40時間までとする

●1ヵ月ごとの1週の平均労働時間は50時間まで

となっています。

 

清算期間1カ月越えの時間外労働の考え方

この1ヵ月を超えた場合のフレックスタイム制における時間外労働の考え方は以下のようになります。

①フレックスタイム制を適用する清算期間において1週平均40時間を上回る法定労働時間の総枠を超えた場合はその時間

これは先ほど表でも記載しましたがもう1度載せます。

1週平均40時間の計算方法:法定労働時間の総枠=週の法定労働時間(1週40時間)×変形期間の暦日数/7

変形期間総枠
4週間160時間
29日165.7時間
30日171.4時間
31日177.1時間

*この0.1は6分に当たります。

たとえば、3か月の期間を定めた場合に31日の月が2回、30日の月が1回あるとした場合には31日の総枠177.1×2+30日の総枠171.4時間を加えた525.6時間がこの3か月の法定労働時間の総枠になり

この時間を超えると割増賃金が発生します。

②1か月ごとに区分した期間の1週平均が50時間を超えた場合はその時間

この1週平均に50時間になるのは、だいたい月の時間外労働が45時間弱の場合です。また実際計算式から1週平均50時間においての総枠を計算してみた表が以下になります。

変形期間総枠
4週間200時間
29日207.1時間
30日214.2時間
31日221.4時間
社労士オザワ
1か月ごとの労働時間を見てこの総枠を超えていたら割増賃金が発生します。

また改正前のフレックスタイム制の説明でも具体的な書き方も交えて示しましたが、この全期間の1週平均40時間・1ヵ月ごとの週平均50時間を超えて労働させる場合には

フレックスタイム制も含めた36協定の提出が事前に必要になるので、注意してください。

 

週休2日制を採用時の法定労働時間の総枠の考え方が通達→条文に明記

週休2日の際は祝日も休みになるケースが多いと思うので、こういったことは少ないと思いますが、土日以外の全ての日を労働日数とすると

曜日のめぐり次第では、1日8時間働いてもこの記事の中でも挙げた1ヵ月の法定の労働時間の総枠を上回るケースがあります。そこで今までは通達にてこの際の要件が決められていたのですが、改正法ではこれが条文に明記されました。

明記された要件

●1週間の所定労働日数が5日である

●労使協定に清算期間内の総労働時間は1日8時間×所定労働日数と定める

この2つ要件を満たせば計算上の法定総労働時間を超えても、割増賃金の対象となりません。

 

中途入社や、中途退職時の対応

1ヵ月を超える清算期間を定めたフレックスタイム制においては

その定めた期間より短く働いた労働者(中途入社や中途退職者など)に関しては、週の平均労働時間が40時間を超える場合には割増賃金の支払いが必要となります。

 

改正フレックスタイム制の具体的な運用例

次は架空のA社を具体例に用いて改正フレックスタイム制の運用例を図とともに説明していきます。

A社のフレックスタイム制
●清算期間(フレックスタイム制の適用期間)は毎月の1日から末日までの3カ月間

●清算期間における総労働時間は8時間×1箇月の所定労働日数(土日は休日)

●1日の標準労働時間は8時間

●必ず労働しなければならない時間帯(コアタイム)は午前10時から午後3時まで

●適用社員の選択により労働することができる時間帯(フレキシブルタイム)は、始業時間帯=午前6時から午前10時までの間、終業時間帯=午後3時から午後7時までの間

改正フレックスタイム制、3か月運用

出典:厚生労働省、労働基準法など一部を改正する法律案について

これは厚生労働省の資料ですが、とてもわかりやすい図だったので引用しました。それではこのA社で働いた場合の6月~8月のフレックスタイム制の運用を見ていきましょう。

A社従業員
8月は夏休みに子供が家に帰ってくるから働く時間を短くしたいわ

6月(労働日数21日)

A社従業員
6月は比較的時間に余裕があるから1日の働く時間を長くしよう!

この従業員は、6月は毎日8時に出勤して6時に帰ることにしました。

この結果1日1時間余計に働いたので一月合計でこの時間が21時間になりました。

7月(労働日数22日)

A社従業員
6月は余計に働いたから7月は普段通りに働こう!

7月はこの従業員は1日8時間の普通通りに働きました。

8月(労働日数23日)

A社従業員
よし、6月に毎日少し余計に働いたから8月は早く帰るようにしよう!

そして8月は、6月に21時間余計に働いたおかげで、この21時間を使って8月は早く帰宅できる日が増えて孫と過ごせる時間が増えました。

このように、今までの1ヵ月単位のフレックスタイム制では1ヵ月の総労働時間(1週間平均40時間)を超えた時間は割増賃金が発生するので、会社の命令や必要が無い場合は働けなかったのが

このフレックスタイムが3か月以内の清算期間で運用できることになると、具体例のようにこの月は多く働いてこの月は働く時間を短くしよう!というような

3か月を通して労働者が自由に働く時間を決めることが出来る柔軟な運用が可能となります。

繰り返しになりますが、それでも1ヵ月に分けた固定期間の1週平均労働時間が50時間以上までとなっているので、後に続く月の労働時間を減らすために無制限に長時間労働出来るわけではありません。

そしてその上限を超えて働くには36協定の提出と割増賃金の支払いが必要になります。

社労士オザワ
また厚生労働省から新しいフレックスタイム制の運用に関する情報が出たら追記していきたいと思います。

それでは以上で終わります。

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