毎月勤労統計の不適切調査がどうして雇用保険に影響するのか?

毎月勤労統計の不適切調査がどうして雇用保険に影響するのか?
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厚生労働省が毎月勤労統計調査という統計調査を不適切に調査していたことが今問題になっています。

その内容は、東京都では500人以上の規模の会社では全数調査しなければならなかったものを、一部抽出でしか調査をしなかったということで

平成16年以降同調査における賃金額が低めに出ており、結果としてこの統計が元で給付水準が決まる雇用保険や労災保険が過少に支給されていた人がいて

対象者には追加で給付されることが決定しました。

毎月勤労統計調査において全数調査するとしていたところを一部抽出調査で行っていたことについて/厚生労働省

毎月勤労統計調査に係る雇用保険、労災保険等の追加給付について/厚生労働省

とここまではテレビや新聞のニュースなどで皆さんご存知だと思いますが

それではどうしてこの毎月勤労統計調査と雇用保険や労災が関係しているのか?ということを知っている方は少ないと思います。

 

そこで今回この記事では、社労士試験で嫌というほど勉強した雇用保険の知識を生かして、働く上で身近な雇用保険に限って

どうして毎月勤労統計を不適切に調査をすると雇用保険の給付に問題が起こって来るのか?ということについて少し解説したいと思います。

社労士オザワ
2012年に会社が倒産して基本手当を受け取っていた身としては、個人的にもかなり興味がある話題ではあります。

雇用保険と毎月勤労統計調査の関係

それではまず雇用保険と毎月勤労統計調査の関係から、影響を受けるメジャーな給付に絞って挙げていきます。

基本手当

雇用保険に加入している労働者の方は、会社を自己都合で離職した際は離職日以前2年間の間に12カ月以上被保険者の期間が

または会社が倒産した場合など自己都合でない場合などは、6カ月以上の被保険者期間がある

そんな人が退職した場合に支給されるのが基本手当(失業給付)と言われるもので、この基本手当の計算において問題になっている毎月勤労統計調査が関係してきます。

実際の計算を順番で見ていくと

 

この基本手当の支給額は

①まず始めに賃金日額という金額を以下のような計算式で出します。

被保険者期間として計算された最後の6か月間の賃金の総額÷180日

これ要は、6カ月でみた1日当たりの賃金額を出したもので

臨時に支払われる賃金や3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(ボーナスなど)は抜いて計算しています。

②そしてこの賃金日額をその金額の範囲で45%から80%にして基本手当の日額を出す。

下の図の見方は一番左が先ほど説明した賃金日額、そして真ん中がその金額に×パーセンテージ、一番右がその結果の範囲です。

60歳未満

基本手当日額の計算60歳未満

60歳以上65歳未満

基本手当の計算60歳以上65歳未満

引用:雇用保険の基本手当日額が変更になります/厚生労働省

このように年齢や賃金日額に合わせて、賃金日額が低い人ほど高いパーセンテージをかけることになります。

そしてこうやって出された基本手当の日額を、ここでは詳細は省略しますが、離職理由や雇用保険に加入していた年数で変わる所定給付日数という、日数分貰えます。

 

基本的にはこの考え方で基本手当の金額は決まるんですが、実は①で計算した賃金日額には上限と下限の金額が年齢ごとに決められていて

前年度の毎月勤労統計調査の平均給与額が増えたか減ったかに基づいて、その次の年の8月1日からこの上限と下限を変更しているんですよね

そしてこの賃金日額が変わるということはもちろん基本手当の日額も変わります。

平成30年8月1日は前年度の平均給与額が0.5%増えていたので、この賃金日額が上がりました。

上限額

30年度基本手当日額上限額

下限額

30年度基本手当日額下限額

引用:雇用保険の基本手当日額が変更になります/厚生労働省

この上限額と下限額は、文字通り①と②で計算して出した基本手当の日額がこの基準を超えるとその上限の金額まで

そして下回るとその下限額が貰えるよ、ということになります。

なので、毎月勤労統計調査で不適切な調査が行われていた場合は、この上限と下限の数字が変わってくることになり

賃金日額が高い又は低くてこの上限や下限の金額までしか貰えていなかった人はには影響が出てくるんだ、ということですね。

 

就業促進手当

またこれも基本手当と同じ考え方なんですけど、就業促進手当と呼ばれるものも毎月勤労統計の不適切調査の影響を受けます。

この就業促進手当とは、簡単に言うと退職して基本手当を貰っていないもしくはもらっていても、全部もらっていない人が早期に就職した場合にもらえる手当で

  • 就業手当(臨時的なアルバイト等に就職した場合)

 

  • 再就職手当(常用的な職業に就いた場合)

 

  • 就業促進定着手当(再就職手当を受けた人が、その6カ月職場で働き、その賃金が低下した場合)

 

  • 常用就職支度手当(就職困難者が、1年以上の常用型の仕事に就いた場合)

このように4種類に別れていて、残っている手当の日数に応じて一時金が貰えるものです。

またこの手当ごとの詳細な説明は、当記事の趣旨ではないので控えます。もっと詳しく知りたい方は下記のリンクを参考にしてください。

就業促進手当/ハローワークインターネットサービス

 

そしてこの就業促進手当も基本手当の日額が上限額に限って、毎年8月1日に前年度の毎月勤労統計調査の平均給与を元に変更になるので、不適切調査の影響を受けます。

平成30年8月1日に変更された金額が以下の通りです。

就業促進手当の上限額

引用:雇用保険の基本手当日額が変更になります/厚生労働省

 

雇用継続給付

そして最後は雇用継続給付に関しても、前年度の毎月勤労統計調査の平均給与の増減によって翌年の8月1日から変更があるので

この不適切調査の影響を受けることになります。

 

具体的に見ていくと

  • 高年齢雇用継続給付

この雇用継続給付は、雇用保険の被保険者期間が5年以上ある人が、60歳以降に継続して会社に雇用された場合や離職して再就職した時に

退職時の賃金が継続や再就職した時の賃金と比べて75%未満になったら月ごとに支給される給付金です。

詳しく知りたい方は以下をどうぞ

高年齢雇用継続給付について/千葉労働局

この高年齢雇用継続給付についても、毎月勤労統計調査の平均給与の増減に伴い

支給の限度額と最低限度額、60歳到達時の賃金月額が変更になります。

高年齢雇用継続給付、支給限度額変更

引用:高年齢雇用継続給付、育児休業給付、介護休業給付の受給者の皆様へ/厚生労働省

 

  • 育児休業給付

これはご存知の方が多いとは思いますが、雇用保険の被保険者期間が休業を開始した日前2年間の間に12カ月以上ある人が

1歳に満たない子を養育するために会社を休んだ場合に貰える給付です。

雇用継続給付/ハローワークインターネットサービス

そしてこの育児休業給付について毎月勤労統計が影響する所は2点あって

①始めに説明した基本手当と同様に、休業をした日前の6か月分の1日当たりの平均的な賃金を、50%(180日までは67%)かけて月ごとの給付額を出すのですが

休業開始時賃金日額と呼ばれる、1日当たりの賃金額の上限額は、基本手当の所で書いた30~45未満の上限額が適用されます。

なので、この上限額は勤労統計の平均給与で変わってくるので、影響を受けるということです。

②また1月当たりの支給額も勤労統計の増減によって変更されます。

育児休業給付、限度額

引用:高年齢雇用継続給付、育児休業給付、介護休業給付の受給者の皆様へ/厚生労働省

 

  • 介護休業給付

これは、2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態にある配偶者、父母、子祖父母、兄弟姉妹などを介護するために仕事を休んだ時に貰える給付です。

この介護休業給付も、育児休業給付と同じく休業前6か月間の一日分の賃金額を求めて、これを支給日数にかけて金額を求めるのですが

この時使用する休業開始時賃金日額は、基本手当の45歳以上60歳未満の上限額が使用されるので勤労統計の影響を受けることになります。

またこちらも育児休業給付と同じく、勤労統計の増減により、支給の限度額が変わります。

介護休業給付、限度額

引用:高年齢雇用継続給付、育児休業給付、介護休業給付の受給者の皆様へ/厚生労働省

 

まとめ(過少給付の対象になる人と相談する方法)

このように、毎月勤労統計の調査を誤った手法で行ってしまったばかりに

雇用保険だけで見ても、多くの給付に影響が出てしまったことがわかります。

しかも今回は省きましたが、労災でも毎月勤労統計調査を用いて給付水準が決められているので、その影響は雇用保険だけには留まらないんですよね。

またこの記事では、雇用保険で勤労統計調査の影響を受けるメジャーな給付のみを説明したので、対象になり得る全ての給付を労災保険と合わせて知りたい

または自分が追加給付の対象になるのか相談したいという方は、対象になる給付の一覧や、厚生労働省で追加給付の専用ダイヤルの番号が書かれたパンフレットがあるのでよかったら参考にしてください。

雇用保険・労災保険・船員保険の給付を受給していた皆様へPDF/厚生労働省

それでは以上で終わります。

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