会社の罰金制度は違法!遅刻魔を救った先輩の話とともに

賠償予定の禁止

今回は会社の罰金制度、労働基準法16条賠償予定の禁止についての話です。

以前勤めていた会社でこんなことがありました。

当時会社に中途採用されたばかりの20代前半の社員が居たのですが、その社員は入社後1か月くらい経つと、5分から10分の遅刻を毎日するように

そしてその遅刻癖は上司や部長、果ては社長が叱責しても治りませんでした。

そこで、社員の直接の上司がある案を思いつきました。それは遅刻をする度に1000円の罰金を徴収するというものです。

その案は社長も大賛成しすぐ採用されることになりました。

その当時は罰金を徴収するのは少しおかしいのでは、とは思っていましたが、何がどうおかしいのかは説明できませんでした。

それではこの会社の罰金制度は法的にどこがおかしいのでしょうか、皆さんは説明できますか?

そこで、以下ではこの会社の罰金制度の法的な解説を行い、最後には法律や規則だけでは解決できない事例を私の体験談を交えてお伝え出来ればと思います。

 

賠償予定の禁止を知れば、罰金制度がわかる

この罰金制度は労働基準法の条文に答えが出ています。

16条

使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償を予定する契約をしてはならない。

実際に民法では420条賠償額予定といって、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができるとされています。たとえば商品を納入する契約を結んで、もし納入できなかったら違約金いくらとか。

これが一般的な取引には認められています。

でも労働契約において使用者よりも弱い立場にある労働者を守るのが労働基準法、ということでこの原則を労働契約においては修正しています。

それが賠償予定の禁止になり、労働契約を結ぶ際に契約の途中で退職したら10万円の罰金!とか会社の備品を壊したら5万円の罰金というような賠償の額を予定する契約を禁止しています。

要はあらかじめこれこれしたら〇〇円の罰金!というような金額を予定することを禁止した条文です。

このことから、始めに上げた遅刻した者への罰金制度はこの条文に当てはめると違法ということになりますが、この条文は実際に会社に損害を与えた者に対しての損害賠償まで否定しているものではありません。

 

会社の罰金制度はどうしたらいいのか?→懲戒規定での対応に変えよう

それでは遅刻を繰り返す者への処分は法的にはどのようにしたら適切なのでしょうか?これは就業規則の懲戒規定にて対処するのが適切だと言えます。

ここで簡単に就業規則上の懲戒規定について説明します。

始めに懲戒規定は設けてある会社がほとんどだと思いますが、この懲戒規定を新たに作って就業規則に定める場合は就業規則の変更に当たるので、従業員の代表に新たに意見を聞いてその意見書とともに労基署に提出しなければなりません。

そしてこの懲戒に関しては主に以下の6つの種類があります。

●戒告・けん責  

将来をいましめる事始末書を提出するのがけん責、しない方が戒告です。

●減給      

こちらは労基法91条にて減給は1回の事案に平均賃金1日の半分以内、1賃金支払い期間では賃金総額の10分の1以内(月何回も減給するする場合)と定められています。              

●出勤停止

●昇給昇格の停止

●降格

●懲戒解雇

そして就業規則に懲戒規定を定める場合は懲戒の種類と事由を予め定めることが必要です。

これは国労札幌支部事件(最高裁昭和54年10月30日第三小法廷判決)において述べられていて、裁判所の考え方になります。

もっと具体的にこの懲戒規定の定め方が知りたい方は、厚生労働省東京労働局のHPにある就業規則モデル例を覗いてみてください、この中の11章表彰及び懲戒に具体的な解説が載っています。

厚生労働省・東京労働局、就業規則の作成例

そしてこの具体的に定めた懲戒によって遅刻なら始めはけん責や戒告、繰り返すようなら減給という具合に対応していきます。もちろん先ほど懲戒の中で説明した通り減給は額の制限があるので注意が必要です。

ここまで見てきた方ならおわかりかと思いますが、間違っても具体的な金額を示してこれをしたら罰金だ!という対応は違法なのでやめましょう!

 

法律や規則だけじゃない対応も時には大事

ここからは始めに紹介した遅刻する社員の話

彼の遅刻癖は罰金刑が科せられるようになって始めのうちは収まりましたが、また少しすると変わらず毎日遅刻するように

そして会社の罰金制度はその後職場に社労士が入り、就業規則を新たに作成する際にこれはまずいという事で無くなり、その後は遅刻に際しては懲戒規定が適用されるようになりました。

あいつは本当にどうしようもない

あんな会社を舐めてるやつなんてすぐ辞めさせちまえよ

従業員の間でも彼のことを悪く言う人も出てきて、会社も懲戒規定を徐々に重くしていって最後は解雇出来ないかと考えていたようです。

しかしそこで、罰金制度を作った彼直属の上司が立ち上がりました。

「こんなに会社で注意して説教しても遅刻癖が治らないのはおかしい、どうしてもあいつには遅刻癖を治して立派な社会人になって欲しい!」

そして上司は毎日仕事が終わった後彼を飲みに誘うようになりました。

いやいやそんなのパワハラでしょ、また罰金制度みたいに変なことするのは止めて欲しいよねと皆笑っていましたが、その上司は本気で、毎日仕事終わりに彼を誘って飲みに行っていました。

そして上司の対応が功を奏したのか彼は遅刻することが少なくなり、数週間すると遅刻は無くなりました。

その上司は俺があいつを毎日脅かして遅刻癖を治してやったんだ!と笑っていましたが、その後彼にその飲み会の事を聞いて驚きました。

彼が言うには、その上司は飲みに行くと必ず何か困っていることはないかと必ず聞くそうです。そしてただひたすら悩みを聞いてくれるだけ

また会社に遅刻した際は怒ることなく、また今日も会社の愚痴でも話そうぜ!俺はお前の味方だ!と笑って背中を叩いてくれたと言います。

そして毎日飲みに行って会社の愚痴や悩みを発散する日々、慣れない職場が不安で毎日眠れなくて毎日怒られて、退職も考えていたのに

先輩に会社の愚痴や不安をぶちまけると何故か心が晴れやかになって次の日から仕事頑張ろう!という気持ちになった。

そして徐々に、こんないい先輩に迷惑をかけちゃいけない!仕事を頑張って恩返ししよう!という気持ちが強くなって毎日会社に行くのが楽しくなった。

 

まとめ

最初は匿名の彼にしようと思っていましたが、恥ずかしいけどこの遅刻する社員実は自分です。

この労基法16条賠償予定の禁止の記事を書こうと思った時に、まだ自分が若かった時ダメな自分を救ってくれた罰金上司のことを思い出した。

法律や規則に従って会社を運営していくのは大切なことだしそれをサポートするのが社労士の仕事だけど

問題を起こした社員にすぐ法律や規則を適用するのではなく、その社員から話を聞いてその問題の原因を一緒になって考えて解決していくことが一番大切なんじゃないかと思う。

毎日飲みに行くのはやりすぎだしパワハラだと思うが、罰を与えるだけじゃなくて自分の悩みにとことん付き合って自分を変えてくれた先輩には本当に感謝している。

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