労働基準法の1から7条までは、労基法の基本7原則と呼ばれていて、この法律を理解する上で大切な考え方になります。
今回はその中の労働基準法5条、労働基準法の中で一番厳しい罰則が科せられる強制労働の禁止について実際の条文からその内容まで
そして最後には、労働基準監督年報を参考にして、年度ごとに強制労働の禁止について指導や送検された件数をまとめてみました。
もくじ(ワンクリックで一発ジャンプ)
労働基準法5条、条文と罰則
労働基準法5条、強制労働の禁止
使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。
条文の引用HP:電子政府の総合窓口 e-Gov 労働基準法
そして罰則に関しては、労働基準法上で一番重い1年以上10年以下の懲役又は、20万円以上300万円以下の罰金が科せられます。
強制労働の禁止が定められた背景と目的
それでは、条文の解説の前に強制労働の禁止が制定された背景から書いていきます。
この強制労働の禁止ですが、そもそも日本国憲法18条の考え方
日本国憲法18条
何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪による処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服せられない。
条文の引用HP:電子政府の総合窓口 e-Gov 日本国憲法
この条文の内容を労働基準法において具体化したもので
特に戦前は使用者が暴行や脅迫によって、労働を強制するようないわゆる封建的な悪習が行われており
このようなことが続くと労働者の人権が守れないので、労働者の自由な意思に基づく労働を保証する目的で作られた条文です。
参考通達:(昭23・3・2 基発381号)
強制労働の禁止、解説
この強制労働の禁止ですが、条文を読んでそのままの意味ですが、基本的な考え方は会社から労働者に対する暴行や脅迫、監禁を伴うその労働者の意思に反した強制的な労働を禁止したものです。
ただ次に説明するケースはもしかしたら、少しグレーな会社なんかはやってしまっているかもしれないので注意が必要です。
そして条文にもあるように、直接的な暴行や脅迫、監禁だけではなくてその他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段、これも強制労働に当たります。
この精神又は身体をの自由を不当に拘束とは具体的には
- 長期労働契約
- 労働契約不履行に対する賠償額予定の契約
- 前借金契約
- 強制貯金
このような例が挙げられます。
この4点をみるとわかるとは思うのですが
1長期の労働契約だったり、2労働契約の不履行に損害賠償を定めている、又は3会社から借金を背負わされて働く4給料から天引きされて強制的に貯金させられる
これは通達で示された例にすぎませんが、こんなことされたら会社を自由に辞められませんよね、このようなケースを精神又は身体を不当に拘束する手段と言います。
そしてこの例である前借金は労働基準法では、借金と賃金を相殺することを禁止しているのですが、この相殺を行わない合法的なケースであっても
その借金が労働者に対して客観的に見て、会社を辞めさせないで働け!というような黙示の威圧を及ぼす場合は合法的であっても強制労働に当たるとしています。
ただこの中で、就業規則に社会通念上認められる懲戒罰を規定することはこの強制労働に当たりません。
参考通達:(昭23・9・13 発基17号 昭23・3・2 基発381号 昭63・3・14 基発150号)
労基署からの指導や送検数を調べてみた
この強制労働の禁止ですが、今のご時世でも違反していたり送検されるような会社があるんだろうか?と疑問に思ったので最後に簡単ですが調べた結果をまとめてみました。
参考にしたのは、労働基準行政の活動状況が数字とともにまとめられた平成26年から28年の労働基準監督行政という資料です。
実際の資料はここからダウンロードできます。→厚生労働省、労働基準監督年報
●定期監督でわかった強制労働の禁止違反
0件
●送検された会社
金属製品製造業 1件 商業 1件 その他の事業3件
平成27年(定期監督件数133116件)
●定期監督でわかった強制労働の禁止違反
0件
●送検された会社
食料品製造業 1件 商業 1件 その他の事業 1件
平成28年(定期監督件数134617件)
●定期監督でわかった強制労働の禁止違反
社会福祉施設 1件
●送検された会社
商業 1件
それでは以上で終わります。
それでは見ていきましょう!